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東京地方裁判所 昭和43年(行ウ)130号 判決 1971年12月22日

原告 宇田川海一

右訴訟代理人弁護士 加藤晃

同 五三雅弥

被告 江戸川税務署長 松本正雄

右指定代理人 光広竜夫

<ほか三名>

主文

一  被告が原告の昭和四一年分所得税につき昭和四二年七月三一日付でした更正処分および過少申告加算税賦課決定処分を取消す。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

事実

一  当事者双方の申立て

(原告)

主文同旨

(被告)

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二  原告の請求原因および被告の主張に対する反論

(請求原因)

1  原告は、被告に対し昭和四一年分所得税として課税所得金額一、三八九、〇八四円、課税額八八、九四〇円と確定申告したところ、被告は、譲渡所得五、四五二、四五八円の申告洩れがあるとして、昭和四二年七月三一日付で、課税所得金額を六、八四一、五四二円、課税額を二、二〇三、一〇〇円と更正し、過少申告加算税一〇五、七〇〇円の賦課決定(以下、本件各処分という。)をした。

原告は、被告に対し本件各処分につき異議の申立てをしたところ、昭和四二年一一月一八日付で棄却決定がなされ、さらに、東京国税局長に対し審査請求をしたが、昭和四三年三月二五日棄却の裁決がなされ、同年四月二七日その裁決書謄本の送付を受けた。

2、しかし、原告には、昭和四一年に前記のような譲渡所得はなかったものであって、本件各処分は違法であるから、申立掲記のとおりその取消しを求める。

(被告の主張に対する反論)

被告主張の本件各処分の根拠のうち、売買の日時を否認し、その余の事実を認める。

売買の日時は、昭和三五年一一月二日である。

したがって、右譲渡にかかる所得は、昭和三五年分の所得に属するから、これを昭和四一年分の所得に属するとしてなした本件各処分は、所得の帰属年を誤った違法なものである。

三、被告の答弁および主張

(答弁)

請求原因1の事実は認める。

(主張)

本件各処分の根拠は次のとおりである。

原告は、その所有の東京都板橋区板橋四丁目八六三番の一、宅地(以下、本件宅地という。)を昭和四一年六月一六日片岡良一、同テキの両名に売渡し、同月二三日右売買を原因とする所有権移転登記をした。

本件各処分は、原告主張の確定申告額のほか、原告において申告しなかった右譲渡による代金一五、三二七、〇〇〇円のうち一四、七〇〇、〇〇〇円を収入金額としてなされたものである。

四  証拠関係≪省略≫

理由

請求原因1の事実および被告主張の本件各処分の根拠のうち、原告が本件宅地を片岡良一らに売渡した日時を除き、その余の事実は当事者間に争いがない。

本件各処分の適否は、一に本件宅地の右譲渡による所得の帰属年の如何にかかっているから、以下この点につき判断する。

前記争いのない本件宅地の売買に関する事実と≪証拠省略≫を総合すると、次の事実を認定することができる。

原告は、昭和三五年一一月二日、本件宅地につき、片岡良一との間において、代金坪当り一〇〇、〇〇〇円、公簿上の面積一四七坪、合計一四、七〇〇、〇〇〇円、ただし、実測のうえ坪数に増減のあるときは代金額を増減する、即日、手附金として四、七〇〇、〇〇〇円を支払い、売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記をする、残代金は、実測面積確定のうえ所有権移転登記完了と同時に支払う、との約定の売買契約を締結し、同日、右手附金の授受および仮登記手続を了した。そして、同月下旬までの間に前記代金一四、七〇〇、〇〇〇円が支払われ、本件宅地は、地上建物収去のうえ片岡に引渡され、爾後、同人において周囲に有刺鉄線を張りめぐらすなどしてこれを占有するに至った。ところで、本件宅地の面積は、その後の調査によって一六一坪あることが明らかとなったが、右増加分代金の坪当り単価につにて売買当事者間で折合わず、その後二、三年を経て、原告は片岡の主張を容れて同人に対し坪五〇、〇〇〇円の割合による増加分代金の支払いを督促したけれども、同人は言を左右にして右額による増加分代金ですら容易に支払いに応じようとしなかった。また、片岡は、本件宅地を他に転売する目的で買受けたものであって、原告からの所有権移転登記は転買人の確定後片岡を省略してする約のもとに、原告から片岡に対し右登記に必要な原告名義の白紙委任状、印鑑証明書を交付していたのであるが、転買人が定まらないため、原告は、その後、片岡の要請によって、その都度印鑑証明書を更新して交付し、譲渡所得税の申告を差控え、固定資産税も従前のとおり原告名義のまま納付していた。しかし、その間、片岡が増加分の代金を支払わないため、原告も印鑑証明書の交付を拒んだりしたことなどもあり、このようにして前記契約後五年余を経過しても、なお転売できなかったところから、片岡は、本件宅地を自ら使用することに決し、昭和四一年六月一四日、増加分代金として六二七、〇〇〇円を支払うことによって原告の了承を得、同月一六日、前記仮登記につき解約を原因とする抹消登記手続をしたうえ、前記のとおり同月二三日、所有権移転登記を経由したものである。

≪証拠判断省略≫

以上の認定事実によると、本件宅地の譲渡代金のうち昭和三五年中に支払いを受けた一四、七〇〇、〇〇〇円については、前記所有権移転登記の原因日付に拘らず、昭和三五年分の所得に属するものと認めるのが相当というべきである。

そうとすれば、被告が右登記原因日付の昭和四一年六月一六日に右譲渡がされたものと判断して右の一四、七〇〇、〇〇〇円につき同年分の所得に属するものとしてなした本件各処分はいずれも違法といわざるをえないので、原告の本訴請求を正当として認容することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高津環 裁判官 内藤正久 佐藤繁)

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